2013年2月1日金曜日

お金より、心の大きさ、美しさ。


青信号が逆さになっていました。でもフランス人はそんなこと気にしません。

上を向いていようが下を向いていようが、青信号だろうが赤信号だろうが、気にしません。

僕もそんな心の大きな男になりたいと思います。

どうも山田です。


昨日、フランスにビッグニュースが飛び込んで参りました。

ベッカムがLAギャラクシー(アメリカ)からパリサンジェルマンへ移籍することが発表されたのです。


LAギャラクシーからPSGに加入したデヴィッド・ベッカム(写真:Le monde.fr)


またサッカーの話かとやれやれの人もベッカムなら読んでくれるでしょ?

どんだけお腹いっぱいご飯食べても甘いものだけは別腹でしょ?

元イングランド代表のベッカムは、マンチェスターユナイテッド、レアルマドリード、ACミランなど、

欧州のビッグクラブを渡り歩いてきたサッカー界のスーパースターです。

とはいえベッカムももう37歳。体力、技術の衰えも指摘されています。

パリサンジェルマンにとってこれがいい買い物なのか、無駄遣いなのかは、

実際にプレーを見てみないとわかりません。

スタジアムは満員になるでしょうし、ユニフォームも売れるでしょうから、

商業的には既に成功と見て間違いないかと思いますが。

僕もせっかくパリにいてるので、一度スタジアムに足を運んでみたいと思います。


さて、パリサンジェルマンとは一体どんなクラブなのか、ご紹介しましょう。

PSG(ペーエスジェー)と呼ばれるパリ・サンジェルマンは1970年に創設されたクラブで、

欧州の多くのクラブが100年近くの歴史を持つのに比べると、比較的新しいクラブです。

もともとパリにはいくつかのクラブがあったのですが、60年代にどのクラブも低迷してしまい、

60年代の終わりにはフランスの1部リーグからパリのクラブがなくなってしまいます。

そこでパリにビッグクラブ(つまり欧州一のクラブ)を作ろうという運動が起こりました。

著名人らがお金を出し合い、パリに新しいクラブが出来ました。

その新しいクラブとパリ郊外のサンジェルマン・アン・レイ市のクラブが合体して誕生したのが

パリサンジェルマンです。

パリ市内にサンジェルマン・デ・プレという地区があるため勘違いする人が多いのですが、

パリサンジェルマンのサンジェルマンは、このサンジェルマン・アン・レイのサンジェルマンです。

現在もパリサンジェルマンの練習場はこのサンジェルマン・アン・レイ市にあります。

ちなみに、1970年創設時のクラブの会長であるピエール=エチエンヌ・ギュヨ氏は、

2002年W杯で日本代表のフィリップ・トルシエ監督のアシスタントとして活躍し、

現在は日本でジャーナリストとして活動しているフローラン・ダバディのおじいちゃんです。

パリサンジェルマンはフランスリーグ2回の優勝を誇るフランスの名門クラブになりましたが、

欧州のビッグクラブからは程遠く、近年は低迷を続けていました。

ところが、2011年にカタール王族のナセル・アル・ケライフィ氏がクラブを買収すると、

潤沢な資金を駆使して次々と有名選手を獲得し、改めて欧州一のクラブを目指しています。

著名人らが資金を出し合って創設したパリサンジェルマンはそうではありませんが、

欧州のほとんどのクラブは、それぞれの自治体が創設し所有し管理してきました。

それが、最近ではお金持ちがクラブを買い、有名選手を買い漁るようになりました。

個人的には、こういったサッカー界への過剰なビジネスの介入を快くは思っていませんが、

国内リーグの人気が衰えてきているフランスサッカー界にとっては意味のあることかと思います。


ところで、ベッカムはパリサンジェルマンからの給料全額を、

恵まれない子供たちへの慈善事業に寄付することを明言しています。

顔だけちゃうんかい!!っていうツッコミが世界中から聞こえます。

完全に話が反れてしまいますが、ふと、ジェラール・ドパルデューの顔が浮かびました。

フランス映画界を代表する俳優です。


フランス映画界の重鎮ジェラール・ドパルデュー氏(写真:parismatch)


昨年、フランス政府は年収が100万€(約1億2500万円)を超える者に対し、

75%の所得税を課す方針を固めました。

これに反発したドパルデュー氏はフランス国境に近いベルギーの村に移住。

それがメディアで報じられ、「税金逃れ」「団結心の欠如」などと批判されると、

「フランス国籍を返還する」と宣言して、ベルギー国籍の取得へ動きました。

結局、富裕層に寛容な税制をとるロシア政府から招待を受け、ロシア国籍を取得しました。

日本でも最近は「勝ち組、負け組」などと格差社会が話題になったりしていますが、

欧州でのそれとは比較できないかと思います。

しかし、収入を慈善事業に充てるお金持ちがいる一方で、

国を捨ててまでもお金にしがみつくお金持ちもいるわけです。

ドパルデュー氏は「これは税金逃れの為ではなく、

才能のある成功者を罰しようとする政策に反対するため」と主張しているし、

お金持ちから税金を多くとった方がいいなどとは単純には言えませんが、

ドパルデュー氏の行動とベッカムの行動を見ると、やはりベッカムの行動に美しさを感じます。

ベッカムを動かしたのは、お金ではなく、欧州一のクラブを目指すPSGのビジョンであり、

何よりサッカーに対する情熱だったのだと思います。

人は誰もが「幸せ」を求めて生きていますが、少なくともお金で「幸せ」は買えない。

お金では買えないものが「幸せ」を作るのだと、僕は思います。


サッカーネタから政治ネタ、そして幸福論と、幅の広さを見せてみました。

ベッカムのように顔もお金も才能もないけれど、僕も心だけは美しくありたいと思います

ドパルデュー氏のように体も顔も大きくはないけれど、僕は心だけは大きくありたいと思います。



日仏交流コーディネーター
山田 剛士

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