天気のいい日にカフェのテラスで渋めのコーヒーを啜りながら本の世界に入る。
至福のひと時です。
「パリのカフェ」という響きが、この単なる暇つぶしにお洒落な色を与えてくれます。
そろそろ帰ろうかとお金をテーブルに置いたその時でした。
いきなり日本人男性が僕に話しかけてきました。
「あの~すいません…」
道でも聞かれるのかなと思いました。すると…
「もしよかったら、一緒に一杯飲みに行きませんか?」
「え???僕と???」
見ず知らずの男の人からいきなり飲みに誘われる…そんなことあります?笑
とはいえ断る理由もないし、何ならちょっと飲みたかったので、お供させていただくことにしました。
お名前は出していいのかわからないのでTさんとしておきましょう。
Tさんは、スイスのジュネーブに在住だそうで、この日はパリにある日本の眼鏡店「パリミキ」(メガネの三城のパリ支店)にメガネを買いに、そのためだけにわざわざスイスから来られたそうです。
夕食は日本食が食べたいということで、うどんとラーメンをはしごしたそうです。
食いしん坊万歳\(^o^)/
僕に声をかける前に、他のカフェに一人でいてた女の子に目をつけていたらしいのですが、あいにく逃げられてしまったそうです。
逃した魚は大きいですね。まぐろを釣るつもりが、たこ釣っちゃったぐらいな感じでしょうか。
ジュネーブの研究機関で「素粒子」の研究をしてらっしゃるというTさんに、素粒子とは一体何なのかと尋ねました。
Tさんはおそらくかなりわかりやすく説明して下さったのでしょうが、僕のちっぽけな頭脳では全然理解できませんでした。
Tさんはこう言いました。「この宇宙のことは全て数式で説明ができるんです」と。
「この人、頭が良すぎて逆にクレイジーやな」と思いました。
そういえば、、フランスでは、「日本人ってすごい真面目で頭もいいけど、飲んだりしたらすっごいクレイジーなんだろ?」ってよく聞かれます。
そのたびに、肯定したくはないけど、否定もできないもどかしさに襲われます。
なので、「馬鹿と天才は紙一重って言うやろ?」と答えています。
それはさておき、Tさんとは、海外で生きている日本人同士、共通していることも多くて色々な話で盛り上がりました。
そうこうしているうちに、いつの間にか空は真っ暗で、綺麗な月が浮いていました。
僕の終電の時間が近いので、最後に連絡先を交換してTさんとはここでお別れ。
いつかスイスに行った際はTさんが案内してくださるそうです。
ただ、Tさんのお話を聞く限り、スイスはめちゃくちゃ物価が高いそうなので、たぶん行きません(笑)
でもいつか、お金ができたら旅行にでも行きたいと思います。
Tさんには、その時までに、新しい素粒子ではなく、お馬鹿な僕でも素粒子を理解できる方法を発見しておいていただきたいと思います。
さて、終電に間に合わせるため、駅までの道を急ぎます。
駅に着いて、階段を駆け下り、ホームに出たら…
乗るはずの終電の列車の一番後ろの車両が目に入りすぐに消えていきました。
山田、終電を逃す。
まぁよくある話です。
ここが日本であれば、ネットカフェに入れば朝まで寝るなり、ネットするなり、漫画を読むなりできるのですが、ここはフランス。
ネットカフェはもちろん、24時間やってる白木屋も、マクドナルドも、吉野家も、ローソンもありません。
というわけで、せっかくの機会なので、夜のパリを散歩してみることにしました。
歩き始めて15分。早速、酔っ払いに絡まれました。
「ヘーーーーイ!」と馴れ馴れしく近づいてきた外国人だと思われるその酔っ払いは、
「ユーノー?アイムクレイジー!!」って言われたから、
んなもん見たらわかるわと思いつつ、「イエス!!」って言うておきました。
すると酔っ払いが「アンデュー?ユーアークレイジー?」って聞いてきたので…
日本人が何でもかんでもイエスイエス言うて、ノーとは言わへんと思ったら大間違いや!
日本人やって言う時は言うんや!!という感情を込めて、「ノー!!」と言ってやりましたよ。
すると酔っ払いは、ちょっと大人しくなって「オー、ユーアージェントルメーン」と言うてくれました。
支離滅裂。
飲んでクレイジーになるのは何も日本人だけではない、と確信しました。
さて、そんなクレイジーな酔っ払いは放っておいて、僕は歩き続けました。
オペラ→シャトレ→サンミシェル→マビヨン→サンジェルマンデプレ→セーヌ川→オルセー→アンヴァリッド→アルマ橋→ジョルジュサンク→シャンゼリゼ通り→コンコルド→ピラミッド→オペラ。
パリに来たことがある方なら、僕がどれだけの距離を歩いたかわかっていただけるのではないでしょうか。
終電がなくなった1時から始発が来る5時まで、4時間歩き続けました。
ちなみに、朝4時のシャンゼリゼはこんな感じ。
とはいえ、夜のパリはクレイジーな輩がどこに潜んでいるかわかりませんので、みなさんは決してマネしないようにお願いします。
歩いている間は全く眠気はなかったのですが、電車に乗ると安心したのか途中で寝てしまい、降りるはずの駅を乗り過ごし、なかなか家に帰してもらえず…。
やっと家にたどり着いて、ベッドにごろーんと横になった時、なんとも言えない幸せを感じました。
なんちゅう一日や…。
日仏交流コーディネーター
山田 剛士
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