2022年2月22日火曜日

ナイスな銀 ロコ・ソラーレの 空は晴れ。

北京五輪が閉幕しました。

東京五輪に引き続いてコロナ禍での開催となりましたが、行動が規制されてコンディションの調整が難しい中でも、選手たちは日頃の努力の成果を存分に発揮し、感動を与えてくれました。

競技種目の中には、普段はあまり注目されないスポーツも多くありますが、そういったマイナースポーツにスポットが当たるというのも五輪の醍醐味の一つだと思います。

みなさんの中にも、これまでに見たことのなかった競技を目にして、それが好きになったという方もおられることでしょう。

僕は今回の五輪で「カーリング」の面白さに心を奪われました。

まず何よりも、日本代表として出場し、見事に銀メダルを獲得した「ロコ・ソラーレ」の選手たちのチームワークや競技に対する姿勢が素晴らしいなと思いました。

彼女たちの競技中の様子を見ていると、どの国の選手たちよりも明るい表情や笑顔がみられて、本当にこのスポーツを心から楽しんでいるというのが伝わってきます。

しかし、僕も長年サッカーをしてきたのでわかるのですが、真剣な勝負の場で、しかも五輪のような大舞台で「楽しそうにみせる」ということは、決して簡単なことではなく、なかなかできることではないのです。

ロコ・ソラーレの吉田知那美選手は「苦しい場面で苦しそうな顔をするのは誰にでもできると思うけど、苦しい中で楽しむには、たぶん覚悟がいる」と話していました。

ロコ・ソラーレの選手たちの口からは「ナイスー!」「頑張れ!」「ありがとう!」などの前向きな言葉が盛んに飛び交っていたのも印象的でしたが、こういった一つ一つの掛け声が、チーム全体にポジティブな雰囲気を生み出し、それが「心から楽しむ」ことや「ナイスプレー」に繋がっているのだと思います。

日本では太古の昔から「言葉に魂が宿る」とされていますが、何ごとにおいても「前向きな言葉」が「ポジティブな雰囲気」を作り、それが「その力を最大限に引き出す」という好循環を生み出すのです。

さて、はじめはカーリングのルールがわからない状態で見ていた僕ですが、少しずつルールがわかってくると、より面白く感じるようになりました。

職業病でしょうか、何かにつけて語学に繋げて考えようとしてしまう僕は、その時に「これって語学学習と同じだな」と気がつきました。

スポーツでは「ルール」がわかればその面白さがよりわかるようになるのと同じで、語学学習でも、語学における「ルール」つまりは「文法」が理解できればその面白さがより感じられるようになるのです。

例えば「カーリング」でいうと、スイーパーが投げられた石の通る軌道を掃く際に、他の選手たちが「ヤップ!」とか「ウォー!」などと叫ぶのですが、これが「ヤップ!」は「掃け!」「ウォー!」は「掃くな!」という指示の声なのだと知れば、このスポーツの面白さをより感じられることでしょう。

「フランス語」でいうと、「複合過去」「半過去」「大過去」という3つの過去を表す時制があって、場面によって使い分けるのですが、この使い分けがわかるようになれば、よりこの言語の奥深さを感じることができます。

スポーツも語学も「ルール」によって成り立っています。そのルールをしっかり理解してこそ、身につけた技術が、覚えた単語が「生きてくる」のだと思います。

「言葉に魂を宿す」ためにも文法をしっかりと身につけたいものです。

2022年2月8日火曜日

ニワツトリ、カケ鳴く朝に、ことばかけ。

本日、2月8日は「ニワトリの日」だそうです。「2(に)と8(わ)」だから「ニワトリ」という安易な語呂合わせ、というより無理矢理なこじつけですが、日本記念日協会に認定されています。

古くからニワトリは、その鳴き声から「カケ」と呼ばれていました。昔の日本人にはニワトリの鳴き声が「コケコッコー」ではなく「カケコッコー」と聞こえていたのでしょう。その後、和歌の世界で、この「カケ」に「庭の鳥」を意味する「ニハツトリ(庭つ鳥)」という枕詞*が使われるようになり、やがてこの枕詞の方が「ニワトリ」を示す名前となっていったのです。
*枕詞:和歌において、決められた語の前に置かれる修飾句で、主に5音で表される。

さて、フランスでは「ニワトリ」が国を象徴する鳥「国鳥」とされています。フランス語では「ニワトリ」は「Coq (コック)」と言いますが、Coq (コック) だから「国鳥(こくちょう)」なのでしょうか?

もちろん、そうではありません。

現在のフランスはもともとは「ガリア」という国で、そこに住む人々は「ガリア人」と呼ばれていました。フランス語のもととなったラテン語に「Gallus(ガルース)」という言葉があるのですが、この言葉が「ガリア人」と「ニワトリ」のいずれをも意味していたことから、これまた語呂合わせで「ニワトリ Gallus」が「ガリア人 Gallus」の象徴となり、それが現在のフランス人にも受け継がれることになったのです。「名は体を表す」とはよく言ったもので、ニワトリのその威風堂々と胸を張った立ち振る舞いは、まさにフランス人の姿とぴったり重なります。

さて、ラテン語では Gallus と呼ばれていたニワトリでしたが、フランス語では Coq と呼ばれるようになります。この Coq という言葉もまた、ニワトリの鳴き声からとられたものです。昔の日本人には「カケコッコー」と聞こえていたニワトリの鳴き声は、昔のフランス人にはおそらく「コックコッコー」と聞こえていたようで、そこから Coq(コック) という言葉が生まれたのです。また、日本語でも「カケコッコー」から「コケコッコー」に変化したように、同じ鳴き声でも時代によって聞こえ方が異なるようで、フランス語では「コックコッコー」だった「ニワトリの鳴き声」が「Cocorico (ココリコ)」に変化しました。

さらに、ここからがニワトリの国鳥としての本領発揮で、まるでニワトリから卵が生まれるかのごとく、この Coq という言葉から様々な言葉が生まれていきます。

ジブリ映画で「コクリコ坂から」という作品がありますが、この「コクリコ」とはフランス語で「ヒナゲシ」を意味する「Coquelicot(コクリコ)」からきています。ヒナゲシの花が「ニワトリ Coq(コック)」の鶏冠(とさか)に似ていることからその名がつきました。ちなみにヒナゲシもまたフランスの「国花」とされています。

フランス語に「いたずらっ子」を意味する「Coquin(コカン) / Coquine(コキーヌ)」という言葉があります。この言葉もまた「ニワトリ Coq (コック)」から派生したものです。ニワトリが餌を突っついている様子が、いたずらっ子が人を突っついている様子に重なったのでしょうか。確かに、フランス人はえてしていたずら好きなところがあります。

フランス人といえば「おしゃれ」というイメージを持たれている方も多いかもしれませんが、フランス語で「おしゃれな」という意味の「Coquet(コケ) / Coquette(コケットゥ)」という形容詞も「ニワトリ Coq(コック)」から生まれた言葉です。確かにあの真っ白な上着にに真っ赤な帽子はおしゃれな気もしますし、とてもよく「似合っとり」ます。ニワトリだけに…。

みなさんのズッ「コケ」る様子が目に見え…え?「カケ」る言葉もない?もう「ケッコー」ですって!?

おあとがよろしいようで。