2022年2月8日火曜日

ニワツトリ、カケ鳴く朝に、ことばかけ。

本日、2月8日は「ニワトリの日」だそうです。「2(に)と8(わ)」だから「ニワトリ」という安易な語呂合わせ、というより無理矢理なこじつけですが、日本記念日協会に認定されています。

古くからニワトリは、その鳴き声から「カケ」と呼ばれていました。昔の日本人にはニワトリの鳴き声が「コケコッコー」ではなく「カケコッコー」と聞こえていたのでしょう。その後、和歌の世界で、この「カケ」に「庭の鳥」を意味する「ニハツトリ(庭つ鳥)」という枕詞*が使われるようになり、やがてこの枕詞の方が「ニワトリ」を示す名前となっていったのです。
*枕詞:和歌において、決められた語の前に置かれる修飾句で、主に5音で表される。

さて、フランスでは「ニワトリ」が国を象徴する鳥「国鳥」とされています。フランス語では「ニワトリ」は「Coq (コック)」と言いますが、Coq (コック) だから「国鳥(こくちょう)」なのでしょうか?

もちろん、そうではありません。

現在のフランスはもともとは「ガリア」という国で、そこに住む人々は「ガリア人」と呼ばれていました。フランス語のもととなったラテン語に「Gallus(ガルース)」という言葉があるのですが、この言葉が「ガリア人」と「ニワトリ」のいずれをも意味していたことから、これまた語呂合わせで「ニワトリ Gallus」が「ガリア人 Gallus」の象徴となり、それが現在のフランス人にも受け継がれることになったのです。「名は体を表す」とはよく言ったもので、ニワトリのその威風堂々と胸を張った立ち振る舞いは、まさにフランス人の姿とぴったり重なります。

さて、ラテン語では Gallus と呼ばれていたニワトリでしたが、フランス語では Coq と呼ばれるようになります。この Coq という言葉もまた、ニワトリの鳴き声からとられたものです。昔の日本人には「カケコッコー」と聞こえていたニワトリの鳴き声は、昔のフランス人にはおそらく「コックコッコー」と聞こえていたようで、そこから Coq(コック) という言葉が生まれたのです。また、日本語でも「カケコッコー」から「コケコッコー」に変化したように、同じ鳴き声でも時代によって聞こえ方が異なるようで、フランス語では「コックコッコー」だった「ニワトリの鳴き声」が「Cocorico (ココリコ)」に変化しました。

さらに、ここからがニワトリの国鳥としての本領発揮で、まるでニワトリから卵が生まれるかのごとく、この Coq という言葉から様々な言葉が生まれていきます。

ジブリ映画で「コクリコ坂から」という作品がありますが、この「コクリコ」とはフランス語で「ヒナゲシ」を意味する「Coquelicot(コクリコ)」からきています。ヒナゲシの花が「ニワトリ Coq(コック)」の鶏冠(とさか)に似ていることからその名がつきました。ちなみにヒナゲシもまたフランスの「国花」とされています。

フランス語に「いたずらっ子」を意味する「Coquin(コカン) / Coquine(コキーヌ)」という言葉があります。この言葉もまた「ニワトリ Coq (コック)」から派生したものです。ニワトリが餌を突っついている様子が、いたずらっ子が人を突っついている様子に重なったのでしょうか。確かに、フランス人はえてしていたずら好きなところがあります。

フランス人といえば「おしゃれ」というイメージを持たれている方も多いかもしれませんが、フランス語で「おしゃれな」という意味の「Coquet(コケ) / Coquette(コケットゥ)」という形容詞も「ニワトリ Coq(コック)」から生まれた言葉です。確かにあの真っ白な上着にに真っ赤な帽子はおしゃれな気もしますし、とてもよく「似合っとり」ます。ニワトリだけに…。

みなさんのズッ「コケ」る様子が目に見え…え?「カケ」る言葉もない?もう「ケッコー」ですって!?

おあとがよろしいようで。

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