日本は世界でも有数の自転車大国です。
保有台数は7000万台を超え、日本の人口が約1億3千万人ですから、およそ2人に1人が自転車を持っていることになります。
保有率だけでいうとオランダやドイツの方が多いのですが、欧米で自転車というとマウンテンバイクなどの本格的なものです。
日本ではマウンテンバイクの保有率は11%にしか過ぎず、63%をシティ車(いわゆるママチャリ)が占めます。
つまり、欧米における自転車は余暇や休暇を楽しむための遊び道具であり、日本におけるそれは日常の生活用品であるといえます。
さて、今回は、そんな自転車をピックアップします。
前回の記事では「fromage」つまりフランス語でチーズを意味する名前が付いた自転車をご紹介しましたが、それだけではないのです。
よく見ると、他にもフランス語の名前がついた自転車がいっぱいあります。
「なんでこんな名前つけたん!?」とネーミングセンスを疑いたくなるものばかりですが…。
Avec vent(アヴェック ヴァン)
「vent(ヴァン)」は「風」の意味、「avec(アヴェック)」は「~と共に」とか「~を使って」という意味なので、「Avec vent」で「風にのって」ぐらいの意味でしょうか。
正確には「Avec le vent」となるのですが、自転車らしい爽やかなネーミングかと思います。
ちなみにこの「avec」という言葉、最近の若い世代の方はご存知ないかもしれませんが、数十年ほど前までは「カップル」の意味として日本の街中で普通に使われていました。(*日本語での表記は「アベック」)
皆さんのお父さんとお母さんも、結婚前は「アベック」だったのです。
フランス語の「avec」にはカップルという意味はありませんので悪しからず。
Rendez-vous(ランデヴー)
この「ランデヴー」という言葉も先ほどの「avec」と同様、数十年前までは日本語として使われていた言葉で、「デート」という意味でした。(*日本語での表記は「ランデブー」)
本来はフランス語で「人と会うこと」「人と会う約束」という意味で、その「人」は恋人であろうが兄弟であろうが友人であろうが誰でもいいのですが、なぜか「恋人と会うこと」つまり「デート」の意味として使われるようになったのです。
「アメリカ人は金に生き、日本人は仕事に生き、フランス人は愛に生きる」なんて言葉をどこかで聞いたことがあります。
「アベック=カップル」にせよ、「ランデブー=デート」にせよ、「愛」にまつわる言葉がフランス語から来ていたのは、そんなフランス人のイメージのせいなのかもしれません。
そして、それやったら「あれ」もあるやろうと探していたら見つけました…。
Amour(アムール)
そのまんま「愛」の意味です。
しかし、なぜ自転車に「愛」なのでしょうか。
イメージしてください。
夕陽照りつける河川敷に二人乗りで右に左にフラフラしながらゆっくりと前へ進む制服を着た若い男女。
青春を謳歌する若者たちのその自転車に「amour」と書いていたら絵になりません?
ちょっとクサ過ぎるかな(笑)
Petit maman(プチ ママン)
「Petit」は「小さな」という意味と、「愛しい」という意味を持ちます。
「maman」は「ママ」というお母さんに対する呼び方ですから、「petit maman」で「愛しのママ」という意味になります。
正しくは「petite maman(プチットゥ ママン)」となりますが、こんな名前が自転車についていれば、お母さんも大変なお買い物に精が出ることでしょう。
まさに主婦の味方。
APRES×MIDI(アプレミディ)
正しくは「après-midi」となりますが、「午後」の意味です。
「-」のところをお洒落に(?)「×」としているところがなんか鼻につきます。
でも、認めたくないけど、お洒落な自転車です。
お洒落女子が乗るやつ。
ちなみに、写真の白以外にも黄緑と黄色の存在を確認しております。
Palme d'or(パルムドール)
この「Palme d'or」の意味は、映画好きの方ならご存知かもしれません。
あのカンヌ国際映画祭における最優秀作品賞を「Palme d'or」といいます。
「Palme」は「ヤシの葉」、「d'or」は「金色の」という意味なので、「Palme d'or」で「金のヤシの葉」となります。
受賞者に贈られるトロフィーの形にちなんでそう呼ばれています。
ちなみに、サッカーの世界最優秀選手賞である「Ballon d'or(バロンドール)」は「金色のボール」の意味。
あ、念のため言っておきますが、この自転車はカンヌ映画祭のパルムドールを受賞しているわけではありませんし、受賞作品に登場しているわけでもありませんので悪しからず。
Agenda(アジャンダ)
「Agenda」は「手帳」の意味。
限界です。
ここまで「なんでこんな名前つけたんや?」っていうネーミングをフォローしてきましたが、これはもう無理です。
なんで手帳やねん!!
そして、最後はこちら。
Avion(アヴィオン)
「Avion」は「飛行機」の意味。
自転車なのに名前は飛行機。
形は自転車やけど飛ぶかもしれへん。
世界の科学技術は恐ろしいほどの勢いで進化しています。
数十年後、自転車が飛ぶようになる日が来るかもしれません。
山田 剛士